忍者ブログ
末期日記新装版
カレンダー
04 2026/05 06
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
フリーエリア
プロフィール
HN:
うざき
性別:
非公開
自己紹介:
鉄の隅から今日は。
ブログ内検索
さえずったー
バーコード
[238] [237] [236] [234] [233] [232] [231] [230] [229] [228] [227
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 先週末より、全く元気がなくてぷげぷげへこたれた呟きをさえずって、お優しい皆様に慰めて頂くという卑怯な真似をしていたうざきです。

元気が無いのは自業自得で、どうにも、傍にいながら出発式を見逃した愚かな自分に愛想が付いたわけなのだが、それを妹さんに言ったなれば、
「お姉ちゃんは分かんない事は人に聞く事を覚えた方が良いね」
と宣われた。
う、いつもは聞いてるもん。ただ、周りの鉄の人達に聞くのが……怖かったんだもん。
だって、皆
『話し掛けるんじゃねー今忙しいんじゃー』オーラをダダ発してたんだもん。
と、言い訳すれば、
「スタッフの人いたんでしょ?渋い車掌さんに話し掛けて聞けば良かったじゃん」
と至極ごもっともな事を言われた。のだが……
だって、その渋い車掌さんの背を隠し撮りするのに夢中になっててそんな事考えつかなかったんだもん。と説明したならば、
……呆れられました。
くっすん。

まあ、それだけが理由で元気が無かった訳じゃないですけどさ。まあ、そういう事にしておいて下さい。

さて、愚痴を聞いて頂いたお詫びに、こないだのお話と対のお話をプレゼント。
プレゼントになるかは分かりませんが……
東北が、酷いヤツだと思います。
とうほく!It's pure!
と思っておられる潜在抱かれ隊の方はお止しになった方が宜しいかもしれません。
前のお話もそうだったのですが、書いてみたら最初思っていた物と大幅に変わってしまいまして、東北も最初はこんな奴ではなかったのですが……こんな事は初めてなのでびっくりです。

それでは下からどうぞ。失礼致します。



凍てつくような朝の冷気の中、彼はあまたの人々に囲まれ、あまたの視線を浴びながら、その全てをものともせず悠然とそこに立ち、これより自分の行くべき道の先を静かに見つめている…
 
……ように周りには見えた。
 
しかし、凛々しいその面の眉間に厳しく寄せられた皺は、盛岡以北の延伸を決められた日より38年、彼が彼として走りだした日より数えても28年、四半世紀を超える年月を経て漸くこの日を向かえ、彼ほどのものでも感じずにはいられないだろう緊張によるものか。
 
……と、周りは解釈した。
 
しかし、軽く後ろに手を組んだまま、微動だにしないその背に横顔に、この日、この瞬間を待ちわび、共に喜びを感じんと集まったあまたの人々には頼もしいものを感じ、その彼の片方の耳に光り輝く小さな星すら、未来への希望のように見える。
 
……から、不思議な話だ。
 
以前、彼のヒネクレた片割れは嫌味ったらしく
 
―君なんてただぼーとつったてるだけなのに良いように取って貰えてさ、
 
ホント得な話だよねぇと皮肉に唇をゆがめ吐き捨てた事がある。
事実、今、彼はやっと開業にこぎつけた感慨とか、責任の重責とかそんなものは全く感じておらず、緊張など薬にしたくとも全くない。
それは、昨日、彼方を出る時に双子の片割れにした理由からではなく、元からそうなのだ。
その点について、彼は自覚的であったので、片割れは正しいところをついていた事になる。
つまり彼は片割れに嘘をついた事になるのだが、そんな事毛程も気にしていない。
それに、気にするような自分であったなら、かの相手の片割れなどとてもつとまらなかっただろう。
 
その点、彼は自分自身の図太い性質に感謝している。
例え、この図太さが鈍さと相まって、相手を苛立たせ怒らせる原因になろうともだ。
 
大体、その分あの相手が見た目や普段の態度と違い凄まじく繊細なのだ。片割れの自分がこのくらい図太くなければバランスは取れまい。
 
だから良いのだと、彼は勝手に自分を正当化している。
 
かのヒネクレた片割れがこんな自分を知ったならどう思うだろう。
いや、気付いてはいるだろうあの鋭敏な相手が気付かない訳が無い。
ただ、妙に自分を理想化している相手はそれから目をそらして、いつまでも出会ったばかりの頃の純朴な自分だと思いこもうとしている。
 
そんな馬鹿な話があるものか。
 
自分とて候補生として見出され高速鉄道となり延伸を繰り返す間、どれほどの者を押し退け蹴落としてきたか分からない。それに何も感じなかった訳もなく、何かを感じたならば、感じる前と同じではいられない。
 
にも関わらずかの相手はそれを認めようとせず、己だけが変わったと、歪んだのだと汚れたのだと主張する。
それは己を貶める事で自分を引き立てようとするかのようだ。
 
彼の言動はいつも逆説的で、そんな彼の言動の理由が分からない。
 
偽悪的なそれが只単に、相手の趣味であるなら自由にすればよいと、相手がどう言おうとそんな事はないと自分が分かっているのだからと勝手にいわせてきたが、最近はそれを理由に事あるごとに自分から離れようとする。
 
冗談ではない。
 
勝手に美化した自分に勝手に卑下した己が合わぬと相応しくないなど勝手に思い込んでそんな事をされてたまる物か。
 
昨日とて訳の分からぬ理由を付けて相手が自分に付けさせたこれを外させようとした。
 
相手の美化した自分にはこれが付いていてはいけないらしい。
腹が立った。
 
あの時、彼の思惑がどうであれ、これを付けたのは自分の意志、付け続けたのも自分の意志だ。どうして外さねばならない、これあるからこそ自分なのに。
相手は自分に騙されてこれを付けさせられたのだと思っている。相手が加害者で、自分は合われな被害者なのだと勝手に思い込んでいる。騙されたからではない、相手が自分を騙しただけだとも思わない。見抜けぬ嘘をつく為にはほんの少しの真実が必要なのだと言ったのは相手自身なのだから。あの言葉にあの笑顔に真実が無かったとは思わない。
何故付けたのか、何故付け続けたのか、そこに自分の意志を見ようとしない。自分の思いを……見ようとしない。
 
相手は、一体自分の何を見ているのか、いいや、相手が見ている自分は本当に……
自分なのだろうか?
 
お前は俺に誰としてあそこに立てと言う?
 
ー君は”東北新幹線”だ。
39年間待ち望まれた君としてそこに立ち走り出せば良い。
 
そうか、お前が見ている俺とは”それ”なのか。39年間の人々の幻……だが、それはすでに……
 
ーそうだ、俺が”東北新幹線”だ。
だから、このままの俺であそこに立ち、走り出す。
 
……俺の事だ。
その為に39年の月日、努力と研鑽を積み重ねて来た。それは何故なのか?
 
こういう場で緊張する事は無い。だが、苦手なのは嘘じゃない。
何もかも面倒で煩わしくて正直逃げたくなるのは本当だ。
だからこそ……
 
ーお前に、みっともないところを見せる訳にはいかないと思うだけだ。
 
候補生の頃から、それこそが自分の行動原理。相手に自分を見てもらいたかったからこそ頑張った。そして、高速鉄道になったのち、捲まず撓まず努力を続けて来れたのも、相手の代わりのこれが、常に自分の傍らで光り輝いていたからこそだ。
どうしてそれを見ようとしないのだろう。
 
昔も今も、お前だけ。
 
分かろうとしないなら、無理にでも分からせてやる。
ー明日、新青森からの最初の列車でこちらに戻る。だから……
待っていて欲しいという言葉を冷めた顔で受け止めながら内心狼狽えていた相手はくるりと背を向けて
 
ーそれ、外したなら考えてあげる。
それがあるなら、僕はいらないでしょ?
 
まだ言うか。
どうせ、その小さな頭の中で俺には理解も出来ないような理屈をこねくり回して早手回しに出した結論なのだろうが、逃がしはしない。
 
お前が、目を背けている俺を見ろ。
 
ー上越、お前は知らなかったのかもしれないが……
俺は、欲張りだったんだ。
ーこれも、お前も、両方いる。
 
開業祝いだ両方寄越せ。
 
立ち尽くした背に向けて、言い切った。
 
きつく、拳が握られたのを見た。きっと、俯いた顔を無理矢理に引き上げれば悔しさに噛み締められた唇に滲んだ血が見れただろう。
 
たまらない。自分の言動にそこまで反応する相手に喜びを感じる自分は相手の美化した自分とは違う……人でなしなのだろう。
 
ー欲張りは、嫌われるよ?東北上官殿
 
何もかもを振り切るように顔を上げて告げた相手の言葉は、真実ではない。
 
相手が、自分を嫌うような事は絶対にないと知っている。
 
いつの事からだろう、相手が自分の背を見つめる瞳が泣き出しそうに潤むようになったのは……
 
それは、彼が新型車両の名を口端に上せるようになった頃か地震に傷ついた頃か28年前共に開業出来ないと分かった頃か、或は、
 
……出会った頃からだろうか。
 
そんな事はどうでもいい。
 
ただ、相手の感情につけ込んで相手を手に入れようとする自分は
どうしようもない卑怯者なのだと知っている。
 
それでも……
 
出発進行の声がして、テープが切られくす玉が割られる。舞落ちる紙吹雪の中、堂々と走り出した一番列車に乗り込みながら、これと入れ違いにこちらにやってくるだろう彼方発の一番列車を見送ったであろう相手の事を只思う。
 
39年間、捲まず撓まず走り続け、やっとこの日を迎え全てを手に入れた。だから……
 
最後に一番欲しかった物を手に入れよう。
 
この列車からあのホームに降り立つ時、相手がそこにいるだろう事は……
 
疑いもしなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
PR
Copyright (C) 2009 うざこと, All right Resieved.
*Powered by ニンジャブログ *Designed by 小雷飛
忍者ブログ / [PR]