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末期日記新装版
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先日の上越お誕生日会で行いました「いつどこでゲーム」
タイムアップで落ちなかったお話を落ちつけて上げてみましたよ。
うざきの入っていたチームのお題は

いつ→GW
どこで→上野動物園
誰が(上越上と)→九州上官が
何をした→何かを企んだ

で、ございました。

途中多少変更が入ってしまってごめんなさい。
ちなみに、実は初つばめ様です。
難しい……
世の中のつばめ書き様ごめんなさい。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
♪あーるはれたーひーるさがりーいちばーにつづーくみち―
 
この世のどこかにはそんな聞いただけで鬱になる歌があるけれど、上越の今の気分は正にそんな感じで晴れやかなGWの日差しの下上野動物園に向かう道を歩いていた。
 
なぜ、こんな事になったのかと思い返せば、それはJRグループ合同の交流会の出来事だ。
クイズ大会の最下位になったチームの罰ゲームとして、『彼』と上野動物園へ行き写真を撮って来る事になってしまったのだ。
 
「待っていた」と、腕を組み動物園の入り口に立っていたのはかの九州新幹線……かつての「特急つばめ」である。
尊大な態度はまあ置いておいて、普通に見れば、その隣に長野がいれば親子にも見えるかなーと上越は思った。
 
その方がまだマシであろう、男二人でこんな家族連れの聖地に訪れる等、まるきりホモの夫婦みたいではないか!

寒いをこしてじんましんさえ出そうである。
 
だが、それ故罰になるのだろうと、思い至れば、この罰ゲームを考えた輩の嫌がらせ精神は神レベルだ。
 
ーまさかアイツじゃないだろうね……

その身は悪意でできている自分の部下の片割れの顔をポンと思い浮かべてうんざりした。
事実関係の是非はともかく、悪意ではなくて餃子で出来ていればこの世の平和も守られるし、観光協会は喜ぶしで言う事無いのにと関係無い事を思うのははっきり言って現実逃避にすぎない。もしくはこの状況の八つ当たり。
ならばさっさと済ませてしまうに限るとしかたなしに上越が

「何か考えて来たの?」

と偉そうな相手に尋ねれば、九州は
「ふ、まかせろ!」

と胸を張って返すとそのまますたすたと上野動物園の代名詞とも言うべきパンダ舎の方に向け自信満々な足取りで歩き出す。

「何?ぱんだ?君にしては随分平凡じゃない」

上越が着いて来ているのか等おかまい無しだ。全ての有象無象は彼の後について来るとでも思っているのかもしれない。

ーこのままそっと帰ってもバレないかなー……

と思うが、その気配を察したのか彼はクルと振り返り

「ふ、馬鹿にするな。それよりさっさとしろ。それとも車両が古いと歩みまで遅くなるのか」
嘗ての最速の名も昔の物と言うわけか
 
嫌味もたらたらに唇端を引き上げての言葉に

「なんだと!」
 
己の神経を逆撫でされて黙っていられる程上越はお人よしではない。
かっとなって掴み掛かりかけて一気に距離がつまる。それを……

「ふん、みろ、追い付いたではないか」

にやりと笑ってその手を逆に掴まれた。そのままぐいとひかれれば吐息のかかる程の距離で相手が冷ややかなレンズ越しにこちらを見下ろす。

「その元気があるのならば、そんなちんたら歩いていないでさっさと来い」
私は、どこぞの誰かのように只待っている程暇ではない。

言い捨て様に手を離し、さら軽く胸を突かれた。
たたらを踏む程ではないが、軽く後ろに後ずさり、二人の距離が空いた。睨みつける上越にふん、と尊大に鼻を鳴らして見下ろすと最早振り返る事無くすたすた
と九州は歩を進める。
 
―むかつく……
 
その憤りは、古い車両を揶揄された事ではなく……それを見越して上越を発奮させた事に対してである。ヒネクレと呼ばれる自分がいいように見切られた。それが腹立たしい。
ならば、踵を返してしまえばいいが、さすればまた言われるだろう
 
『鈍足』と。
 
そんな事許せる物か!
 
生来の負けん気の強さで歩を進め、追い抜こうとすれば、おもしろげに口端を持ち上げた相手もまたスピードを上げる。
だが、決して走る事はしない。自分達のスピードは弁えている。
殆ど競歩のスピードで抜きつ抜かれつで目的地にたどり着いた時には、何故か周りから拍手が起こった。
大人げない自分の行動と恥ずかしさに顔が赤くなるが、競争相手は平然と涼しい顔で賞賛の声を浴びている。
なるほど流石はかの特急つばめ、賞賛の声にはなれっ子と言う事か。
その傲岸さはある意味自分の同期の同僚に似ているかもしれない。

「言っておくがな、私がアイツに似ているのではなく、アイツが私に似ているのだ」
私は、全ての特急の祖であるのだから

一瞬頭をよぎっただけの思考をどうしてそれほど正確に拾ったのか。傲慢に言い捨てた相手の言葉よりもそちらの方に驚けば、瞬きする顔に人悪げに笑いかけ

「そう言う顔を今していた」
東の特急は随分と礼儀を知ら無いと見える。

「私とのデートの最中に他の男の事を考える等とは」

「で、で、で、デートって……」

ここは普通、赤くなるところかもしれないが、だが、この相手が相手では……
はっきり言って怖気が走って血の気が引いた。

「僕、急用思い出したから……」

引いた血の気と共に2、3m後ろに引いて、ついでにそのままその場を引こうとしたならば……

「まあ、待てそんなに照れずとも良かろう」
ぐいと襟首をもたれて引き止められた

「照れてるんじゃなくて引いてんの!大体デートってなんだよ!これは罰ゲームなんだから!」
それに僕は山陽じゃないんだから襟持たないでよ!

懸命に状況の訂正を促せば

「なるほど、デートの相手にこれは失礼だったな」

以外にあっさりと手を離す。
 
それにしても山陽上官の扱いって……
お読み頂いている人の全てが泣くだろう。
 
そんな事は梅雨の雨程にも気にせずに

「デートと誘うのが恥ずかしいから罰ゲームと言う建前を使ったのだろう。ヒネクレと聞いていたが存外可愛いところもある」

勘違いもそのままに、今度は腰を抱く男の腕を

「君に可愛いなんて言われても嬉しくなんかないよ!」

叩き落として懸命にブロックすれば相手は唇を歪めて

「ほう、ならば、誰に言われれば嬉しいと?」

言葉尻を取って揚げ足を取ってきた。馬鹿馬鹿しい。

「天下の九州様が随分下らない事を言うんだね」
誰に言われても嬉しくないよ!

つんと顎を逸らして切り捨てる。言葉遊びをする気は無い。所詮茶番なのだ。やる事やってさっさとこんな相手からおさらばしようと

「それよりさっさと……」

課せられた義務を果たすべく一歩踏み出すが

「そうか?てっきりまたあの男かと思ったぞ」

からかいまじりの言葉に足が止まる。

「……誰の事?さっきから言ってる意味が分からないんだけど?」

嘘だ。言われた瞬間脳裏をよぎったのはたった一人の男の背中、こちらを振り向かぬ男の……
声が固くなったのに気付かれなければいい。
あくまでそらとぼける上越を九州は面白げに見下ろすと

「貴様がそう言うのなら別に構わん。だが……」
その男に一泡吹かせてやりたいとは思わんか?

にやりと笑ってそう告げた。
レンズ越しの酷薄な瞳を黙したまま睨み返す……
この男が何を知るわけもない。

あの男に対する上越の葛藤等何一つ……
 
これまで接点等殆どなかった相手なのだ。
誤摩化してしまえばいい、一笑に付してやればいい。
馬鹿馬鹿しいと切り捨ててやればいい。
 
なのに、何かに見入られたように視線を反らせない。
相手の言葉から気を……反らせないのと同じように。
それは、相手の思惑を……肯定したと同じ事だ。
 
「ついて来い」
九州は何も言わない上越に背を向けて歩き出した。
 
 
その傲慢な歩みは
上越がついて来る事を疑う事など、全くなかった。
 
 
 
 
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