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末期日記新装版
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鉄の隅から今日は。
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有為転変は世の習いと申しますがちょっと自分の身の回りがここ暫くで一気に転変しちゃっておいてかれそうなうざきです。あーれー
何だか人生さぼっていたツケが一気に来たような気もするので自業自得かなと思う所もあったりね。
ぬるま湯に頭まで浸かりきっていたのといい加減年よりなので新しい生活に飛び込まねばならないのは正直恐ろしくて考えるだけで足が震えるのですが、震えながらも前に行かねばならぬのです。だって生活あるし。
そんな訳で、自分に元気を付けるのと、ご自分もお仕事が大変なのに「奥様はここの所すっごく頑張ってる。だから旦那に甘やかしてもらって安眠させてー」と某M様が叫んでいたのを頂いて、書いてみました。不謹慎かもしれませんが、少しでも萌えの足しにして頂ければ幸いです。
ではー


三連休も終わり、また計画停電に振り回される日々が戻った週明け上越が詰所でディスプレイとにらめっこをしているといきなり 

「上越休め」 

BT様がキーボードの脇に勢いよく手を着いて仕事を邪魔してきた。 

「なに?東海道薮から棒に」 

あの日から、自分だけでなく、このBT様も忙しい日々を送っている。のみならず大事な守役が帰ってこない。しかも、八当たり相手の相方は開通したばかりの九州新幹線の相手で大阪からあっちにかかりっきりだ。疲れと不安で訳の分からぬ事を言い出しても仕方がないかもしれないが、今はそんな戯言で一分一秒でも無駄にしたくはない。うろんげに一蔑し、すぐにディスプレイに視線をもどす。だが、BTは引き下がらず 

「自分の路線だけでなく東北の那須塩原間も見ているのだろう」 
非常時といえオーバーワークだ休め! 

そう言ってえいえいと自分よりも体型の良い上越を一生懸命押すとディスプレイの前からどかそうとする。 
「別に僕なんか普段から少ないとこ更に減らしてるんだからこの位…」 

自分で言っていて情けないが「自分の運行」に関してだけならその通りなのだ。だが、東の高速鉄道が三人…特に支柱たる東北が全くこちらに戻ってこれない状況でこの綱渡りのような東の首都圏の運行業務は全て上越な双肩にかかっている。長野がいるとはいえ、幼い長野にそれほどの責任を負わせられない。故に上越はあの日から働きづめに働いていたのだが、まさか鈍いこの王様がそれに気づくとは思えなかったので誤魔化そうとするが、BT様は聞く耳ももたず 

「いーから休め!30分くらいなら問題なかろう!」 

えい!とうとう火事場の馬鹿力で上越を椅子から退かすと自分がそこに収まってしまうと 

「む、急ぎの仕事はこれか、ふむふむ」 
「東海道!」 

勝手に仕事を引き継いで初めてしまった。抗議の声にクルリと振り向くと用意しておいたとおぼしき毛布を投げつけて 

「東の重要書類には手はつけん!何かあったら起こしてやる!貴様にまでここで倒れられてはなー」 

倒れられてはと繰り返すと頬を赤らめ顔を背ける。自分がらしくもない気配りをした事が照れ臭くなったらしい。 

上越は唖然とその横顔を見つめるとあの日以来忘れていた何かが胸の奥からこみあげてきた。溢れるそれを押さえつける事も遮る事もなくそのまま表にだした。 
「そうだね、僕まで倒れちゃったら山形が戻って来るのが遅くなっちゃうもんね」 
「なっ!」 

多分にからかいの籠った言葉にかっとなって振り向いたBT様が見たものは 

「じょ、上越?」 

柔らかく微笑む上越の笑顔と…なのに頬を一筋伝うもの。 
上越はそれを自然な仕草でぬぐうと 

「お言葉に甘えさせていただくよ。貴重な君の気配りだものね」 
寧ろ奇跡?皆が帰ってきたら話してやらなくちゃ 
「きっと、皆信じられないかもだけでね」 

ははっといつものヒネクレた笑みで笑い飛ばすと側のソファに横になり「上越!」と自分を呼ぶBTの声にヒラヒラと後ろ向きに手を降って毛布をひっかぶった。諦めたかのような東海道のため息が薄闇の中聞こえ、カタカタとキーを打つ規則正しい音が続く。 
途切れる事のないそれに耳を傾けながら上越は思う。今回の事で自分の未来はさらに分からなくなった。何時までも真っ直ぐ伸びて行くと思った東北の未来すら分からない。いや、この国の未来すら混沌とし、明日がどんな日になるかも分からない。 
そんな事を一人考えるだけで指先が震えた。仕事に打ち込んだのは必要にかられてだったからだがそんな不安をまぎらわす為もあったのだ。だが… 
自身も何度も繰り返される余震と帰らぬ仲間に不安になりながらも己を気遣うこの国の鉄道な王様の心に、一人じゃないと改めて思う。 
同じ不安じゃない彼には彼の自分には自分の不安がある。それぞれの不安。それは誰も肩代わりは出来ない。だが違っていても不安に耐え人を思い気遣い乗り越えようとするのは同じだ。 
ならば一人じゃない。一人じゃなければ乗り越える勇気が沸いてくる。 

―早く帰って来い。 

双子の片割れ自分の半身。向こうで一人戦っているだろう帰らぬ相手に胸の中呼びかける。 

―僕だけじゃなく、僕らのところに帰って来い。 
お前は一人じゃない。だから… 

―早く帰って来い。 

胸の前、祈るように固く手を組み目をつむる。つかの間の眠りに落ちる上越の耳にキーを打つ音が子守唄のように届いた。 
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