末期日記新装版
カレンダー
最新記事
カテゴリー
最古記事
フリーエリア
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一日遅れですが、ハロウィンSSです。長いので畳みました。下からどうぞ
その日、一人切りの夕食を終えた彼が簡単に後片付けをしていた時…
コンコン
その日、一人切りの夕食を終えた彼が簡単に後片付けをしていた時…
コンコン
扉を叩く音がした。
インターフォンでなく、ノックとは訪ねてきたのが誰かは知らないが今時、珍しい。
皿を洗う手が止まる。
それよりも今日は恋人が新潟だか高崎だかでのパーティーに招かれて留守なので、こんな時間に訪ねてくるような相手に心当たりはないのだが一体誰であろう?
―だるまるに上げるんだー
などと、嬉しそうに菓子を作っていた昨日の恋人の顔を思い出す。
結局昨日はその菓子作りで遅くなった為、にゃんもにゃにゃんもわおーんもお預けで、彼は大変欲求不満に落ちいった。菓子を作る恋人の後ろからその細腰に抱きついてかまえと催促しても
―なぁに?1日早いハロウィンの真似?
はい、お菓子上げるから悪戯しないでね。
そう言って、抱きつく彼を振り返り、口に肩越しに出来たばかりの菓子を押し込んだ。
そうでなく…と文句を言いたかったが、菓子をくわえたままでは口は開けず口を塞いだ菓子は確かに美味い。なので彼は不精不精その手を離したのであった。
しかし、今日こんな味気ない思いをするならば、昨日あの手を離さずに、あんなことやらこんな事やらばっきゅーんとしておけば、動けなくなった恋人を1日一人占め出来たのにと昨日の菓子に釣られた自分に腹が立つ。が、あの時は仕方ない、仕方なかったのだ。何しろ…
―うん、いい子にしてたら明日ご褒美を上げるからねー
などと言われて頭をなでなでされてはすでに心も身体も臨戦体制であっても我慢せざるを得ない。
無理矢理イタシテ後でふてくされられるよりは、相手もその気でイタシタ方が何倍もイイのである。
だが、昨日一晩だけでなく今日一日も上越の言う『いい子』でいたというのに、恋人は彼に何一つ寄越す事なくさっさと向こうに行ってしまい、更に…
―上越先輩は彼方にまだご用があって今日はお帰りにならないそうです。
上越と共にパーティーとやらを楽しんで来た長野が仮装の耳を付けたまま恋人からの伝言を伝えてきた。ちなみにその耳は狼の耳だったので彼は今そこにはない未来の危機の予感にむっと来て、勝手に眉間の皺が一本増えた。
むむぅ、返すがえすも昨日の自分に腹が立つ。
そんな風に彼が彼に腹を立てている間にも、まだ…
コンコンッ
とノックの音はなりやまない。はて本当に一体誰だろう。可能性があるとすれば長野か秋田であるが、長野はもう就寝の時間だし、秋田ならば普通にインターフォンを押すだろう。よしんば飢えた秋田だとすれば、ノックなどせずに扉の存在を無視してずかずかと上がってくるだろう。後は山形くらいであろうか?
首をひねるが、まあ開けてみれば分かるだろう。恋人よりも深く物事を悩まない彼はとっととそう結論づけるとエプロンの裾で大雑把に手を拭いつつ玄関に向かい、扉を開けた。
途端…
「トリックオアトリート!!」
巨大なカボチャが叫んだ。
もう既に就寝している周囲に配慮してそれなりの音量ではあったが、さしもの無口無愛想無表情で物事に動じない(深く考えないから)彼でもこれには少し驚いた。その証拠に眉間の皺が全部取れて扉を開けたままの姿勢で固まっていると…
「ビックリした?」
巨大なカボチャの後ろからヒョイと恋人が顔を出した。
「……ビックリした…」
あまりに虚を突かれた物だから、思わず素直にその言葉を肯定すると、悪戯が成功したのがそんなに嬉しかったのか、けたけた笑った。どうやら恋人は少しキコシメテご機嫌らしい。
「…それより、今日は向こうに泊まると…」
もう用は済んだとカボチャを玄関先に置いた恋人は見れば長野と同様に仮装のままである。定番の外国の魔法使いが被っている黒いとんがり帽子に黒いマント、襟にカボチャがついているのがワンポイントだ。それにしても、しっかりと前を掻き合わせているのは何故だろう?
「ふふふーちゃんと昨日、ご褒美あげるって言ったじゃない?」
昨日も今日も良い子にしてたみたいだからね。
それはつまり、このサプライズがご褒美という事なのだろうか?その為にわざわざ長野に嘘の情報を教えたということなのか。
悪戯っぽく片目をつぶってみせた可愛らしさと悪戯の為にここまでする熱心さにくらっとして眉間を押さえた。
そんな東北など、気にも止めずにすいと部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると
「さあ、トリックオアトリート?」どっちにするの?
突っ立ったままの彼の目前まで迫って尋ねた。
「どっちも何も…」
お菓子を渡す前に悪戯された上、そもそもお菓子など…ポッキーくらいしかない。更にそのポッキーは発売されたばかりの限定ポッキーだ、渡す訳にはいかない。
その逡巡を見て取ったのか、ふふと先程までの無邪気な笑みから一転した怪しい笑みを薄く浮かべ
「…お菓子はくれないんだ、じゃあ…」
…悪戯だね。
するりとその両の白い手をもちあげ彼の首にまわした。
はらりとマントの前が開き、露になった白い腕の内側に視線が釘付けになる…
いや、その腕に続く、はらりと開いたマントの中の白い肢体…
「上越…」
黒いマントの中の上越は生まれたままの姿だった。
黒が白を引き立てる……そのコントラストの艶かしさに、さしもの冷静な彼もごくと息を飲み込んだ。目の奥がちかちかする……これはもう…視覚の暴力という物では済まない。
男の、欲望に対する暴力だ。
これが、悪戯だというのならば、余りにも上越は男の欲を軽視しすぎている。
余りにも急激にもたらされた欲に何とか気を落ち着かせなければと焦る。このままでは、また、上越の身や心を顧みず己の欲を叩き付け、相手を傷つけてしまう。
その一念でぐっと拳を握り身を固くして何度も深い呼吸を繰り返す彼に、艶やかに口角を引き上げると
「無理しなくて良いよ?言ったでしょ?」ご褒美だって…
何も言えない彼を引き寄せ、己の甘い香りのする柔らかな唇を重ねた。
軽く唇で挟む様に甘噛みされ、薄くこちらが開くと待っていた様にぬると薄い舌が差し込まれた。
滅多に相手からこんな積極的なアプローチをかけて来る事は無いが、相手の方が上背がある所為でリードを許すと好き勝手にこちらの口腔を弄んでくる。それは子供が気に入りのおもちゃで遊ぶのと同じような残酷な好奇心に満ちた熱心さを見せる。そんな時の上越は心底この行為を楽しんでいるようだ。
「ん…ふ………」
言葉通りに悪戯に舌で舌をなぞり絡め、ほどいて歯列の並びの良さを一つ一つ舌先で確かめる様につついて、じれたこちらが追いかけると逃げるついでに上あごを軽くなぜて行く……ぞくと腰の奥底に無理矢理灯された欲の炎が大きくなり彼を炙る。
「…ふ……ふふ」
その欲の気配にうっすらと目を開けると視線が絡み、赤く染まった目元が艶やかにほくそ笑んだ。
ちゅくと軽い音と共に軽く離れた唇に逃げ込んだ舌は相手の誘い。そうと分かっていても追わずにはいられないのは男の性だ。
それに、相手が言ったのだ。
無理をしなくていい……我慢しなくていいのだと…
その許しの言葉にぐっと細い腰を抱き寄せて、今度はこちらが存分に相手の口腔を貪った。
先程されたのと全く同じ仕方で返してやれば……
「ぅ………ん…」
合間に漏らされる吐息に甘く色づいた物が混じり始め、相手も己と同じ欲の炎にちりちりと炙られている事を感じて、その事実に更にずしりと腰の奥が重く熱くなる。
「ん…ん……んぅ……」
やがて首にまわしていた白い手が縋り付く様に肩に回った頃、漸く彼は相手の唇を解放した。
ふぁあ……
うっとりと満足げなため息をつく様な甘い声を上げた恋人はくったりと彼に寄りかかりその身を支えた。
少しの間乱れた息を整える為、二人でそのまま互いの体温を確かめる様にじっとしていた。
「ね…どうだった…」
東北の肩口に頭を乗せて横を向いていた上越が小さく聞いた。
「…何が」
上越を抱きしめ肩口に顔を埋めながら重みを支えていた東北が問い返す。
「…ちゃんとご褒美に……なった?」
こんな大胆な事をした人間と同じ者とは思えぬような躊躇いと恥じらいが滲んだ弱々しい問いだった。腕の中の身体も細かく震えている…己のした事に、そうして自分の答えを怖れるように……
まったく、この恋人と来たら!
どれだけ、己が自分の欲を煽る存在だという事をまだ理解していないのだ。
呆れるように、又、違う意味でため息をつくと、それをまた勘違いした恋人がびくりと大きく身を震わせた。
「……ごめん、また、僕…」つまんない事、しちゃったね…
だから違うというのに!
怯えたように身をすくませて離れようとするのを許さずにさらにぎゅっと抱きすくめ
「一つ聞くがな…」
ご褒美と悪戯、本当はどっちだ?
相手が聞き間違えないように耳に直接落とすように問うた。
「え?あ……ど、どっちだろう?」
とにかく君をビックリさせたかったんだ…
おどおどと惑うように答える様は普段の口先から生まれて来たような相手の答えとも思えない稚拙な物だ。だが、その曖昧さがこれが珍しい相手の本音だと教えてくれる。
「あ…で、でも、君の分のお菓子部屋にあるから……そっちがご褒美?」
じゃあ、こっちはやっぱり
「悪戯……かな?」
常に無い自信の無さからすると、どうやら酔った上にパーティでの高揚した気分が重なった為の思いつきの行動だったようだ。
思いつきでこんな危険な真似をする相手に少々腹立たしい物を感じなくもないが、しかし、いきなり思いつきでこんな真似をしようとする位は、自分は相手に…気を許されているらしい。甘えられていると言い換えても良いのかもしれない。そうかそうか……
その事実に気分が高揚して、思わず顔がにやついてしまう。
そう、これはまさしく…
気難しい猫が漸く甘えてくれたのと同じ気分だ。
くくと喉の奥から笑いが込み上げる。肩口でのそれに居心地悪げに相手が身じろぐ。
「……あのさ…離して…」
「トリックオアトリート」
「え?」
相手の戸惑いに覆いかぶせるように
「どうした?トリックオアトリート。菓子をくれないと悪戯するぞ?」
少しだけ腕を緩め、相手の顔を覗き込むように言えば
「だから、部屋にあるから持って…」
視線を避けて顔を背け、両腕を突っぱねて逃げようとする。逃がしてなどやる物か。
「今じゃなきゃ駄目だ」菓子はくれないんだな、じゃあ…
「悪戯だな……」
ねっとりと耳から犯すように低く告げて、先とは違う意味でびくと大きく震えた身体を押さえつけるように抱きしめると、今度はこちらから躊躇う唇を奪った。
やがて深い口づけに力が抜けた相手が己の腕に落ちて来るのを見計らい…
マントを解くと、黒いそれはすると上越の身から滑り落ち、中から真っ白な甘いご褒美が現れた。
東北は菓子よりも白くて甘いそれを手に入れると……
大事に抱え上げて己のベッドに運んで持ち込んだ。
ゆっくりと味わう為に……
インターフォンでなく、ノックとは訪ねてきたのが誰かは知らないが今時、珍しい。
皿を洗う手が止まる。
それよりも今日は恋人が新潟だか高崎だかでのパーティーに招かれて留守なので、こんな時間に訪ねてくるような相手に心当たりはないのだが一体誰であろう?
―だるまるに上げるんだー
などと、嬉しそうに菓子を作っていた昨日の恋人の顔を思い出す。
結局昨日はその菓子作りで遅くなった為、にゃんもにゃにゃんもわおーんもお預けで、彼は大変欲求不満に落ちいった。菓子を作る恋人の後ろからその細腰に抱きついてかまえと催促しても
―なぁに?1日早いハロウィンの真似?
はい、お菓子上げるから悪戯しないでね。
そう言って、抱きつく彼を振り返り、口に肩越しに出来たばかりの菓子を押し込んだ。
そうでなく…と文句を言いたかったが、菓子をくわえたままでは口は開けず口を塞いだ菓子は確かに美味い。なので彼は不精不精その手を離したのであった。
しかし、今日こんな味気ない思いをするならば、昨日あの手を離さずに、あんなことやらこんな事やらばっきゅーんとしておけば、動けなくなった恋人を1日一人占め出来たのにと昨日の菓子に釣られた自分に腹が立つ。が、あの時は仕方ない、仕方なかったのだ。何しろ…
―うん、いい子にしてたら明日ご褒美を上げるからねー
などと言われて頭をなでなでされてはすでに心も身体も臨戦体制であっても我慢せざるを得ない。
無理矢理イタシテ後でふてくされられるよりは、相手もその気でイタシタ方が何倍もイイのである。
だが、昨日一晩だけでなく今日一日も上越の言う『いい子』でいたというのに、恋人は彼に何一つ寄越す事なくさっさと向こうに行ってしまい、更に…
―上越先輩は彼方にまだご用があって今日はお帰りにならないそうです。
上越と共にパーティーとやらを楽しんで来た長野が仮装の耳を付けたまま恋人からの伝言を伝えてきた。ちなみにその耳は狼の耳だったので彼は今そこにはない未来の危機の予感にむっと来て、勝手に眉間の皺が一本増えた。
むむぅ、返すがえすも昨日の自分に腹が立つ。
そんな風に彼が彼に腹を立てている間にも、まだ…
コンコンッ
とノックの音はなりやまない。はて本当に一体誰だろう。可能性があるとすれば長野か秋田であるが、長野はもう就寝の時間だし、秋田ならば普通にインターフォンを押すだろう。よしんば飢えた秋田だとすれば、ノックなどせずに扉の存在を無視してずかずかと上がってくるだろう。後は山形くらいであろうか?
首をひねるが、まあ開けてみれば分かるだろう。恋人よりも深く物事を悩まない彼はとっととそう結論づけるとエプロンの裾で大雑把に手を拭いつつ玄関に向かい、扉を開けた。
途端…
「トリックオアトリート!!」
巨大なカボチャが叫んだ。
もう既に就寝している周囲に配慮してそれなりの音量ではあったが、さしもの無口無愛想無表情で物事に動じない(深く考えないから)彼でもこれには少し驚いた。その証拠に眉間の皺が全部取れて扉を開けたままの姿勢で固まっていると…
「ビックリした?」
巨大なカボチャの後ろからヒョイと恋人が顔を出した。
「……ビックリした…」
あまりに虚を突かれた物だから、思わず素直にその言葉を肯定すると、悪戯が成功したのがそんなに嬉しかったのか、けたけた笑った。どうやら恋人は少しキコシメテご機嫌らしい。
「…それより、今日は向こうに泊まると…」
もう用は済んだとカボチャを玄関先に置いた恋人は見れば長野と同様に仮装のままである。定番の外国の魔法使いが被っている黒いとんがり帽子に黒いマント、襟にカボチャがついているのがワンポイントだ。それにしても、しっかりと前を掻き合わせているのは何故だろう?
「ふふふーちゃんと昨日、ご褒美あげるって言ったじゃない?」
昨日も今日も良い子にしてたみたいだからね。
それはつまり、このサプライズがご褒美という事なのだろうか?その為にわざわざ長野に嘘の情報を教えたということなのか。
悪戯っぽく片目をつぶってみせた可愛らしさと悪戯の為にここまでする熱心さにくらっとして眉間を押さえた。
そんな東北など、気にも止めずにすいと部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると
「さあ、トリックオアトリート?」どっちにするの?
突っ立ったままの彼の目前まで迫って尋ねた。
「どっちも何も…」
お菓子を渡す前に悪戯された上、そもそもお菓子など…ポッキーくらいしかない。更にそのポッキーは発売されたばかりの限定ポッキーだ、渡す訳にはいかない。
その逡巡を見て取ったのか、ふふと先程までの無邪気な笑みから一転した怪しい笑みを薄く浮かべ
「…お菓子はくれないんだ、じゃあ…」
…悪戯だね。
するりとその両の白い手をもちあげ彼の首にまわした。
はらりとマントの前が開き、露になった白い腕の内側に視線が釘付けになる…
いや、その腕に続く、はらりと開いたマントの中の白い肢体…
「上越…」
黒いマントの中の上越は生まれたままの姿だった。
黒が白を引き立てる……そのコントラストの艶かしさに、さしもの冷静な彼もごくと息を飲み込んだ。目の奥がちかちかする……これはもう…視覚の暴力という物では済まない。
男の、欲望に対する暴力だ。
これが、悪戯だというのならば、余りにも上越は男の欲を軽視しすぎている。
余りにも急激にもたらされた欲に何とか気を落ち着かせなければと焦る。このままでは、また、上越の身や心を顧みず己の欲を叩き付け、相手を傷つけてしまう。
その一念でぐっと拳を握り身を固くして何度も深い呼吸を繰り返す彼に、艶やかに口角を引き上げると
「無理しなくて良いよ?言ったでしょ?」ご褒美だって…
何も言えない彼を引き寄せ、己の甘い香りのする柔らかな唇を重ねた。
軽く唇で挟む様に甘噛みされ、薄くこちらが開くと待っていた様にぬると薄い舌が差し込まれた。
滅多に相手からこんな積極的なアプローチをかけて来る事は無いが、相手の方が上背がある所為でリードを許すと好き勝手にこちらの口腔を弄んでくる。それは子供が気に入りのおもちゃで遊ぶのと同じような残酷な好奇心に満ちた熱心さを見せる。そんな時の上越は心底この行為を楽しんでいるようだ。
「ん…ふ………」
言葉通りに悪戯に舌で舌をなぞり絡め、ほどいて歯列の並びの良さを一つ一つ舌先で確かめる様につついて、じれたこちらが追いかけると逃げるついでに上あごを軽くなぜて行く……ぞくと腰の奥底に無理矢理灯された欲の炎が大きくなり彼を炙る。
「…ふ……ふふ」
その欲の気配にうっすらと目を開けると視線が絡み、赤く染まった目元が艶やかにほくそ笑んだ。
ちゅくと軽い音と共に軽く離れた唇に逃げ込んだ舌は相手の誘い。そうと分かっていても追わずにはいられないのは男の性だ。
それに、相手が言ったのだ。
無理をしなくていい……我慢しなくていいのだと…
その許しの言葉にぐっと細い腰を抱き寄せて、今度はこちらが存分に相手の口腔を貪った。
先程されたのと全く同じ仕方で返してやれば……
「ぅ………ん…」
合間に漏らされる吐息に甘く色づいた物が混じり始め、相手も己と同じ欲の炎にちりちりと炙られている事を感じて、その事実に更にずしりと腰の奥が重く熱くなる。
「ん…ん……んぅ……」
やがて首にまわしていた白い手が縋り付く様に肩に回った頃、漸く彼は相手の唇を解放した。
ふぁあ……
うっとりと満足げなため息をつく様な甘い声を上げた恋人はくったりと彼に寄りかかりその身を支えた。
少しの間乱れた息を整える為、二人でそのまま互いの体温を確かめる様にじっとしていた。
「ね…どうだった…」
東北の肩口に頭を乗せて横を向いていた上越が小さく聞いた。
「…何が」
上越を抱きしめ肩口に顔を埋めながら重みを支えていた東北が問い返す。
「…ちゃんとご褒美に……なった?」
こんな大胆な事をした人間と同じ者とは思えぬような躊躇いと恥じらいが滲んだ弱々しい問いだった。腕の中の身体も細かく震えている…己のした事に、そうして自分の答えを怖れるように……
まったく、この恋人と来たら!
どれだけ、己が自分の欲を煽る存在だという事をまだ理解していないのだ。
呆れるように、又、違う意味でため息をつくと、それをまた勘違いした恋人がびくりと大きく身を震わせた。
「……ごめん、また、僕…」つまんない事、しちゃったね…
だから違うというのに!
怯えたように身をすくませて離れようとするのを許さずにさらにぎゅっと抱きすくめ
「一つ聞くがな…」
ご褒美と悪戯、本当はどっちだ?
相手が聞き間違えないように耳に直接落とすように問うた。
「え?あ……ど、どっちだろう?」
とにかく君をビックリさせたかったんだ…
おどおどと惑うように答える様は普段の口先から生まれて来たような相手の答えとも思えない稚拙な物だ。だが、その曖昧さがこれが珍しい相手の本音だと教えてくれる。
「あ…で、でも、君の分のお菓子部屋にあるから……そっちがご褒美?」
じゃあ、こっちはやっぱり
「悪戯……かな?」
常に無い自信の無さからすると、どうやら酔った上にパーティでの高揚した気分が重なった為の思いつきの行動だったようだ。
思いつきでこんな危険な真似をする相手に少々腹立たしい物を感じなくもないが、しかし、いきなり思いつきでこんな真似をしようとする位は、自分は相手に…気を許されているらしい。甘えられていると言い換えても良いのかもしれない。そうかそうか……
その事実に気分が高揚して、思わず顔がにやついてしまう。
そう、これはまさしく…
気難しい猫が漸く甘えてくれたのと同じ気分だ。
くくと喉の奥から笑いが込み上げる。肩口でのそれに居心地悪げに相手が身じろぐ。
「……あのさ…離して…」
「トリックオアトリート」
「え?」
相手の戸惑いに覆いかぶせるように
「どうした?トリックオアトリート。菓子をくれないと悪戯するぞ?」
少しだけ腕を緩め、相手の顔を覗き込むように言えば
「だから、部屋にあるから持って…」
視線を避けて顔を背け、両腕を突っぱねて逃げようとする。逃がしてなどやる物か。
「今じゃなきゃ駄目だ」菓子はくれないんだな、じゃあ…
「悪戯だな……」
ねっとりと耳から犯すように低く告げて、先とは違う意味でびくと大きく震えた身体を押さえつけるように抱きしめると、今度はこちらから躊躇う唇を奪った。
やがて深い口づけに力が抜けた相手が己の腕に落ちて来るのを見計らい…
マントを解くと、黒いそれはすると上越の身から滑り落ち、中から真っ白な甘いご褒美が現れた。
東北は菓子よりも白くて甘いそれを手に入れると……
大事に抱え上げて己のベッドに運んで持ち込んだ。
ゆっくりと味わう為に……
PR
